大判例

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広島高等裁判所 昭和29年(う)170号 判決

論旨は(1)被告人は窃盗の目的で本件被害者方に入り、店内に在つた物品を盗み出そうとしたけれども、これを風呂敷に包んでいるところを発見されたため一物も持出すことができず、その目的を達しなかつたものであるから窃盗既遂ではない。(2)被害者の申立てている被害品と被告人が窃取しようとした物品とは違つているものがあるというのであるが、原判決挙示の証拠特に、河井勇次の司法巡査に対する供述調書、被告人の検察官に対する供述調書に当審における証人長原継明の供述を照し合わせて見ると、当時被告人は家人不在中であつたのに乗じ窃盗の目的で被害者方に入り、その店内にあつた本件被害物件を手あたり次第風呂敷に包んでいるところを、たまたま河井勇次が乗り長原継明が運転していた自動三輪車が通りがかり、河井がこれを見付けて交番所へ急報する一方長原は戸口でその行動等を監視していたところ、被告人は右風呂敷包を携えて屋内から戸口へ出て来たとたんに予て見知りの長原と眼を見合わせたので、そのまま風呂敷包を軒下に置き同人と二、三言葉を交わしているうち警察官等が来て捕えられるに至つたものであることが認められるから、なるほど被告人の気持としては或は窃盗の目的を達しなかつたと言い得るかも知れないけれども、右の行為は刑法第二三五条にいわゆる窃取即ち財物に対する他人の占有を侵しその財物を犯人の支配下に移すという窃盗の構成要件はすでに充足し窃盗既遂の域に達したものと解するのを相当とするから同既遂の罪責を免かれることはできないのである。又原判決挙示の証拠その他記録を調査するも本件の被害物件中に所論のような誤認があるとは認められない。従つて原判決が判示物件につき窃盗既遂を以て処断したのは正当であつて所論のような事実誤認等の違法はない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 柳田躬則 判事 尾坂貞治 判事 石見勝四)

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